判例紹介

  • 2017.09.20 福岡高裁決定
    収録 判例タイムズ1449号144頁,判例時報2366号25頁
    再婚 養子縁組
    「両親の離婚後,親権者である一方の親が再婚したことに伴い,その親権に服する子が親権者の再婚相手と養子縁組をした場合,当該子の扶養義務は第1次的には親権者及び養親となったその再婚相手が負うべきものであるから,かかる事情は,非親権者が親権者に対して支払うべき子の養育費を見直すべき事情に当たり,親権者及びその再婚相手(以下「養親ら」という。)の資力が十分でなく,養親らだけでは子について十分に扶養義務を履行することができないときは,第2次的に非親権者は親権者に対して,その不足分を補う養育費を支払う義務を負うものと解すべきである。そして,何をもって十分に扶養義務を履行することができないとするかは,生活保護法による保護の基準が一つの目安となるが,それだけでなく,子の需要,非親権者の意思等諸般の事情を総合的に勘案すべきである。」
  • 2016.09.14 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1436号113頁
    高額所得者
    「抗告人の給与収入総額は3939万9067円となる。この額は,いわゆる標準算定表(判例タイムズ1111号285頁参照)の義務者の年収の上限額2000万円を大幅に超えていることに鑑み,抗告人の基礎収入を算定するに当たっては,税金及び社会保険料の実額(1348万9317円)を控除し,さらに,職業費,特別経費及び貯蓄分を控除すべきである。」
    「職業費については,抗告人の場合と年収2000万円以下の場合とでその占める割合が大きく変わるとは考えられないから収入比18.92%とすべきである。他方で,特別経費については,一般に高額所得者の方が収入に占める割合が小さくなり,その分貯蓄や資産形成に回る分が増える傾向にあると考えられる。そして,年収2000万円以下の者でも相応の貯蓄はしているはずであり,抗告人のこれまでの貯蓄額が判然としない本件事案においては,抗告人についてのみ純粋に平均的な貯蓄額の満額を控除すべきではなく,標準算定表の上限である年収2000万円程度の者の平均的な貯蓄額との差額のみを考慮すべきである(標準算定方式では,特別経費について年収1500万円以上の者について収入比16.40%との前提に立っているが,年収2000万円程度の場合でも同様の収入比に立っており,この中に貯蓄的要素を既に加味しているともいえる。)。もっとも,本件では,年収2000万円程度の者の貯蓄額と3900万円程度の者の貯蓄額との比較ができる有意な資料がないことから,その差額について推認するほかないところ,抗告人が引用する家計調査年報の,総世帯のうち勤労者世帯の貯蓄率は,年収1018万円以上が27.3%,全収入の平均が21.4%であること,二人以上の世帯のうち勤労者世帯の貯蓄率が,年収1500万円以上が31.9%,全収入の平均が19.8%であること,その他本件に現れた一切の事情を考慮して,特別経費については年収1500万円以上の者の収入比とされる16.40%とするとともに,抗告人について,総収入から税金及び社会保険料を控除した可処分所得の7%分を相当な貯蓄分と定めることとする。」
  • 2016.01.19 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1429号129頁,判例時報2311号19頁
    潜在的稼働能力
    「養育費は,当事者が現に得ている実収入に基づき算定するのが原則であり,義務者が無職であったり,低額の収入しか得ていないときは,就労が制限される客観的,合理的事情がないのに単に労働意欲を欠いているなどの主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず,そのことが養育費の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される場合に初めて,義務者が本来の稼働能力(潜在的稼働能力)を発揮したとしたら得られるであろう収入を諸般の事情から推認し,これを養育費算定の基礎とすることが許される」
  • 2014.06.03 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1410号111頁
    住宅ローン
    「抗告人は,相手方が住宅ローンを負担している自宅に居住しているところ,住宅ローンの負担には資産形成の側面もあるから,その負担分を婚姻費用の分担額から控除すべきであるとの相手方の主張は採用できないものの,これにより抗告人は,住居費の負担を免れていることになるから,抗告人の収入に対応する平均的な住居関係費として3万円を上記婚姻費用の相当額(24万円)から控除する」