判例紹介

  • 2022.05.13 宇都宮家裁
    収録 家庭の法と裁判46号88頁
    増減額 養子縁組
    「相手方夫は相手方と再婚した後も長女と養子縁組をしていないものの、これに準ずる状態にあるとするのが相当であるところ、このような状態は本件合意時に前提とされておらず、これによって本件合意の内容が実情に適合せず相当性を欠くに至ったといえるから、相手方夫と長女が養子縁組に準ずる状態であることは事情の変更に当たるとするのが相当である。」
    「総収入は少なくとも1567万円の営業所得(算定表の上限の金額)を得ていると推認するのが相当といえる。これを前提にすると、相手方夫は、絶対的にも、申立人に比して相対的にも相当に高額な収入を得ていると考えられ、このような相手方夫が長女を事実上扶養して事実上養子縁組している状態であること、長女への生活費等の給付が十分にされていると考えられることに鑑み、相手方夫の上記総収入から208万円程度(相手方夫が扶養義務を負うとした場合の子の生活費を参考にした金額。1567万円×48%×62÷(100+62+62)≒208万円(1万円以下四捨五入。))を相手方の総収入に加算するのが相当である。」
  • 2020.02.20 大阪高裁決定
    収録 家庭の法と裁判31号64頁,判例時報2477号52頁,判例タイムズ1484号130頁
    増減額 潜在的稼働能力
    「抗告人は,前件審判後,断続的にD医師の診察を受け,Hを退職してほとんど収入がない状態となっているが,自らの意思で退職した上,退職直前の給与収入は前件審判当時と大差はなかったし,退職後の行動をみても,抑うつ状態のため就労困難であるとは認められないから,抗告人の稼働能力が前件審判当時と比べて大幅に低下していると認めることはできず,抗告人は,退職後現在に至るまで前件審判当時と同程度の収入を得る稼働能力を有しているとみるべきである。したがって,抗告人の精神状態や退職にょる収入の減少は,前件審判で定められた婚姻費用分担金を減額すべき事情の変更と言うことはでき(ない)」
  • 2019.12.19 東京高裁決定
    収録 判例時報2471号68頁,判例タイムズ1482号102頁,家庭の法と裁判30号78頁
    増減額 年金
    1.事情変更について
    「相手方の退職や再雇用,これらに伴う収入の減少は,前件調停の段階でも蓋然性の高いものとして予想されていたものと認められるものの,確実なものとして具体的に予見されていたものではなく,…これらに伴う収入の減少を前提としたものであったと認めることはできず,これらの事情によって変更されることもやむを得ない」
    2.年金について
    「相手方は,65歳で年金の受給を開始していれば,…年金を受給することができるものと認められることからすると,…相手方が本来であれば得ることができる収入として,婚姻費用の分担額の算定の基礎とするのが相当である。…同居する夫婦の間では,年金収入はその共同生活の糧とするのが通常であることからすると,これを相手方の独自の判断で受給しないこととしたからといって,その収入がないものとして婚姻費用の算定をするのは相当とはいえない。…このような取扱いをする以上,今後,実際に相手方が年金の受給を開始し,受給開始時期との関係で前記の金額よりも高額な年金を受給することができたとしても,基本的には,当該高額な年金の受給に基づいて婚姻費用の算定をすることはできず,この事実をもって,婚姻費用を変更すべき事情に当たるものと認めることもできないということになる。」
  • 2019.08.19 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1473号63頁,判例時報2443号16頁
    増減額
    「不可分一体というべき上記各条項につき,住宅ローンの支払に関係する条項については,本来,家事審判事項とはいえず,本件において変更することは許されないというべきであるから,養育費の月額のみを一方的に変更することは不当な結果を導くことになり,相当でない。」