判例紹介

  • 2019.12.19 東京高裁決定
    収録 判例時報2471号68頁,判例タイムズ1482号102頁,家庭の法と裁判30号78頁
    増減額 年金
    1.事情変更について
    「相手方の退職や再雇用,これらに伴う収入の減少は,前件調停の段階でも蓋然性の高いものとして予想されていたものと認められるものの,確実なものとして具体的に予見されていたものではなく,…これらに伴う収入の減少を前提としたものであったと認めることはできず,これらの事情によって変更されることもやむを得ない」
    2.年金について
    「相手方は,65歳で年金の受給を開始していれば,…年金を受給することができるものと認められることからすると,…相手方が本来であれば得ることができる収入として,婚姻費用の分担額の算定の基礎とするのが相当である。…同居する夫婦の間では,年金収入はその共同生活の糧とするのが通常であることからすると,これを相手方の独自の判断で受給しないこととしたからといって,その収入がないものとして婚姻費用の算定をするのは相当とはいえない。…このような取扱いをする以上,今後,実際に相手方が年金の受給を開始し,受給開始時期との関係で前記の金額よりも高額な年金を受給することができたとしても,基本的には,当該高額な年金の受給に基づいて婚姻費用の算定をすることはできず,この事実をもって,婚姻費用を変更すべき事情に当たるものと認めることもできないということになる。」
  • 2019.11.12 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1479号59頁
    社会保障
    「幼児教育の無償化は,子の監護者の経済的負担を軽減すること等により子の健全成長の実現を目的とするものであり(子ども・子育て支援法1条参照),このような公的支援は,私的な扶助を補助する性質を有するにすぎないから,上記制度の開始を理由として令和元年10月からの婚姻費用分担額を減額すべきであるとする抗告人の主張は採用できない。」
  • 2019.08.19 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1473号63頁,判例時報2443号16頁
    増減額
    「不可分一体というべき上記各条項につき,住宅ローンの支払に関係する条項については,本来,家事審判事項とはいえず,本件において変更することは許されないというべきであるから,養育費の月額のみを一方的に変更することは不当な結果を導くことになり,相当でない。」
  • 2019.03.26 最高裁判所第三小法廷決定
    収録 判例時報2452号14頁
    権利濫用
    「XとYとの婚姻関係が悪化して別居するに至った原因は,専ら,Xの不貞行為にあったというべきである。したがって,XからYに対する婚姻費用の分担を求める請求のうち,X自身の婚姻費用を求める部分については,その請求は信義則に反し,権利の濫用に当たり認められないとの原々審の判断は相当である」との「原審の判断は,是認することができる。」
  • 2019.01.31 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1471号33頁
    権利濫用
    「(2)…本件暴力行為から別居に至る抗告人と相手方の婚姻関係の悪化の経過の根底には,相手方の長男に対する暴力とこれによる長男の心身への深刻な影響が存在するのであって,このことに鑑みれば,必ずしも相手方が抗告人に対して直接に婚姻関係を損ねるような行為に及んだものではない面があるが,別居と婚姻関係の深刻な悪化については,相手方の責任によるところが極めて大きいというべきである。
    (3)…相手方は,…330万円余りの年収があるところ,抗告人が住宅ローンの返済をしている住居に別居後も引き続き居住していることによって,抗告人の負担において住居費を免れており,相応の生活水準の生計を賄うに十分な状態にあるということができる。他方,抗告人は,…約900万円の収入があって,…別居後に住居を賃借し,…同住居において長男を養育している…。
    (4) 上記(3)のような相手方及び抗告人の経済的状況に照らせば,上記(2)のとおり別居及び婚姻関係の悪化について上記のような極めて大きな責任があると認められる相手方が,抗告人に対し,その生活水準を抗告人と同程度に保持することを求めて婚姻費用の分担を請求することは,信義に反し,又は権利の濫用として許されないというべきである。」