判例紹介

  • 2022.10.13 東京高裁決定
    収録 家庭の法と裁判45号47頁
    権利濫用
    「婚姻費用分担義務は、前述したように婚姻という法律関係から生じるものであって、夫婦の同居や協力関係の存在という事実状態から生じるものではないから、婚姻の届出後同居することもないままに婚姻関係を継続し、その後、仮にXとYの婚姻関係が既に破綻していると評価されるような事実状態に至ったとしても、前記法律上の扶助義務が消滅するということはできない。」
  • 2019.03.26 最高裁判所第三小法廷決定
    収録 判例時報2452号14頁
    権利濫用
    「XとYとの婚姻関係が悪化して別居するに至った原因は,専ら,Xの不貞行為にあったというべきである。したがって,XからYに対する婚姻費用の分担を求める請求のうち,X自身の婚姻費用を求める部分については,その請求は信義則に反し,権利の濫用に当たり認められないとの原々審の判断は相当である」との「原審の判断は,是認することができる。」
  • 2019.01.31 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1471号33頁
    権利濫用
    「(2)…本件暴力行為から別居に至る抗告人と相手方の婚姻関係の悪化の経過の根底には,相手方の長男に対する暴力とこれによる長男の心身への深刻な影響が存在するのであって,このことに鑑みれば,必ずしも相手方が抗告人に対して直接に婚姻関係を損ねるような行為に及んだものではない面があるが,別居と婚姻関係の深刻な悪化については,相手方の責任によるところが極めて大きいというべきである。
    (3)…相手方は,…330万円余りの年収があるところ,抗告人が住宅ローンの返済をしている住居に別居後も引き続き居住していることによって,抗告人の負担において住居費を免れており,相応の生活水準の生計を賄うに十分な状態にあるということができる。他方,抗告人は,…約900万円の収入があって,…別居後に住居を賃借し,…同住居において長男を養育している…。
    (4) 上記(3)のような相手方及び抗告人の経済的状況に照らせば,上記(2)のとおり別居及び婚姻関係の悪化について上記のような極めて大きな責任があると認められる相手方が,抗告人に対し,その生活水準を抗告人と同程度に保持することを求めて婚姻費用の分担を請求することは,信義に反し,又は権利の濫用として許されないというべきである。」