判例紹介

  • 2019.01.31 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1471号33頁
    権利濫用
    「(2)…本件暴力行為から別居に至る抗告人と相手方の婚姻関係の悪化の経過の根底には,相手方の長男に対する暴力とこれによる長男の心身への深刻な影響が存在するのであって,このことに鑑みれば,必ずしも相手方が抗告人に対して直接に婚姻関係を損ねるような行為に及んだものではない面があるが,別居と婚姻関係の深刻な悪化については,相手方の責任によるところが極めて大きいというべきである。
    (3)…相手方は,…330万円余りの年収があるところ,抗告人が住宅ローンの返済をしている住居に別居後も引き続き居住していることによって,抗告人の負担において住居費を免れており,相応の生活水準の生計を賄うに十分な状態にあるということができる。他方,抗告人は,…約900万円の収入があって,…別居後に住居を賃借し,…同住居において長男を養育している…。
    (4) 上記(3)のような相手方及び抗告人の経済的状況に照らせば,上記(2)のとおり別居及び婚姻関係の悪化について上記のような極めて大きな責任があると認められる相手方が,抗告人に対し,その生活水準を抗告人と同程度に保持することを求めて婚姻費用の分担を請求することは,信義に反し,又は権利の濫用として許されないというべきである。」
  • 2019.01.23 最高裁判所第二小法廷決定
    収録 判例時報2452号13頁
    社会保障
    「児童手当は,子育て支援のために支給されるものであり,Yが本来負担すべき婚姻費用とは別に子の監護者に支給され,子育て支援に充てられるべきものといえる。前記10万5000円については,Yから長男を監護しているXに交付されていない以上,本件において,同額が別途婚姻費用としてXに支払われるべきものとするのが相当である」との「原審の判断は正当として是認することができる。」
  • 2019.01.11 東京家裁審判
    収録 家庭の法と裁判30号99頁
    住居費 習い事
    1.住居費について
    「申立人が現在の賃貸住宅を借りたのは,主として,平成29年7月に相手方の不貞関係が発覚し,…相手方が,同居宅を出た上,申立人に対し,同居宅から出るよう繰り返し求めたためであると認められるのであり,基本的には,相手方の一連の行為によってやむを得ずに転居したものであると認められる。近隣の住居を借りたのも,夫婦の問題には関係のない,子らの生活環境の変化を最小限にしようとするものであって合理性があり,その広さや賃料額も,従前の生活や親子3人の一般的な生活水準に比して不相当に広く,高額であるということもできないのであり,これらを考慮すると,本件においては,相手方には,申立人の住居費につき,標準算定方式で考慮されている額を超える部分につき収入比で按分して分担すべき義務があると定めるのが公平にかなう」
    2.習い事について
    「一般に,子の学校教育に要する費用は標準算定方式において考慮されているが,習い事の費用は同方式において考慮されているものではない。そして,習い事は,通常の学校教育とは別に任意に行うものであるから,原則として,子の監護者がその責任と負担において行うべきものであるが,義務者がその習い事をさせることについて従前同意していた場合などには,適切な範囲で義務者に負担させるのが相当である。」
  • 2018.10.11 大阪高裁決定
    収録 判例タイムズ1460号119頁,判例時報2412号23頁
    再婚
    「本件婚姻費用分担金は,平成28年10月から平成30年1月までは月額32万円,平成30年2月から平成32年3月までは月額26万円,平成32年4月以降は16万円とするのが相当である。そうすると,平成28年10月から平成30年9月までの未払婚姻費用分担金の額は一応720万円(32万円×16か月+26万円×8か月)と試算できる。」
    「もっとも,相手方は,前記説示のとおり,平成28年10月から平成30年12月分までの養育費として,前夫から378万円(14万円×27か月)を受領している。そうすると,前記試算に係る未払婚姻費用分担金720万円(長女の生活費を含むもの)から,長女の生活費を含まない未払婚姻費用分担金480万円(以下に説示のとおり。)の差額である240万円の限度においては,前夫の上記養育費支払によって要扶養状態が解消されたものとして,未払婚姻費用分担金720万円から控除するのが相当である。」
  • 2018.06.21 大阪高裁決定
    収録 判例タイムズ1463号108頁,判例時報2417号62頁,家庭の法と裁判21号87頁
    未成熟子 習い事
    「長男は,成年に達した後に大学に入学し,現在も在学中であり,抗告人も長男の大学進学を積極的に支援していたのであるから,婚姻費用分担額算定に当たり,長男を15歳以上の未成年の子と同等に扱うのが相当である。」
    「抗告人は,二男に学習塾に通わせたのであるから…,その費用についても相応の負担をすべきであり,抗告人と相手方との収入の較差に照らすと,抗告人がその8割ないし9割程度を負担するのが相当である。」「相手方の年収は,…平成28年が約134万円,平成29年が約158万円である。」「平成28年…の抗告人の年収約836万円…。平成29年…の抗告人の年収約848万円」