判例紹介

  • 2021.04.21 東京高裁決定
    収録 判例時報2515号9頁
    潜在的稼働能力
    「婚姻費用を分担すべき義務者の収入は,現に得ている実収入によるのが原則であるところ,失職した義務者の収入について,潜在的稼働能力に基づき収入の認定をすることが許されるのは,就労が制限される客観的,合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず,そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情がある場合でなければならないものと解される」
  • 2020.11.30 宇都宮家裁審判
    収録 判例時報2516号87頁
    始期
    「婚姻費用分担義務が生活保持義務に基づくものであるという性質及び当事者の公平の観点に照らし,婚姻費用分担の始期については,請求時を基準とするのが相当である。そして,本件においては,申立人が相手方に対し,内容証明郵便をもって婚姻費用の分担を求める意思を確定的に表明しているのであって,この時点をもって婚姻費用分担の始期とするのが相当であると認められる。」
  • 2020.03.04 東京高裁決定
    収録 判例時報2480号3頁,判例タイムズ1484号126頁
    養子縁組
    「親権者である一方の親が再婚したことに伴い,その親権に服する子が親権者の再婚相手と養子縁組をした場合,当該子の扶養義務は,第1次的には親権者及び養親となった再婚相手が負うべきものであり,親権者及び養親がその資力の点で十分に扶養義務を履行できないときに限り,第2次的に実親が負担すべきことになると解される。」
    「一度合意された養育費を変更する場合に,その始期をいつとすべきかは,家事審判事件における裁判所の合理的な裁量にゆだられていると解されるところ…相手方は,抗告人Yの再婚や未成年者らの養子縁組の可能性を認識しながら,養子縁組につき調査,確認をし,より早期に養育費支払義務の免除を求める調停や審判の申立てを行うことなく,3年以上にもわたって720万円にも上る養育費を支払い続けたわけであるから,本件においては,むしろ相手方は,養子縁組の成立時期等について重きを置いていたわけではなく,実際に本件調停を申し立てるまでは,未成年者らの福祉の充実の観点から合意した養育費を支払い続けたものと評価することも可能といえる。以上の事情を総合的に考慮すれば,相手方の養育費支払義務がないものと変更する始期については,本件調停申立月である令和元年5月とすることが相当である」
  • 2020.02.20 大阪高裁決定
    収録 家庭の法と裁判31号64頁,判例時報2477号52頁,判例タイムズ1484号130頁
    増減額 潜在的稼働能力
    「抗告人は,前件審判後,断続的にD医師の診察を受け,Hを退職してほとんど収入がない状態となっているが,自らの意思で退職した上,退職直前の給与収入は前件審判当時と大差はなかったし,退職後の行動をみても,抑うつ状態のため就労困難であるとは認められないから,抗告人の稼働能力が前件審判当時と比べて大幅に低下していると認めることはできず,抗告人は,退職後現在に至るまで前件審判当時と同程度の収入を得る稼働能力を有しているとみるべきである。したがって,抗告人の精神状態や退職にょる収入の減少は,前件審判で定められた婚姻費用分担金を減額すべき事情の変更と言うことはでき(ない)」
  • 2020.01.23 最高裁判所第一小法廷決定
    収録 判例タイムズ1475号56頁,判例時報2454号18頁
    法的性質
    結論:「婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても,これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえない。」
    理由:
    ①「婚姻費用分担審判の申立て後に離婚により婚姻関係が終了した場合…に,婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在せず,」
    ②「家庭裁判所は,過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができるのであるから(前掲最高裁昭和40年6月30日大法廷決定参照),夫婦の資産,収入その他一切の事情を考慮して,離婚時までの過去の婚姻費用のみの具体的な分担額を形成決定することもできる」