判例紹介

  • 2022.02.04 東京高裁決定
    収録 家庭の法と裁判41号60頁、判例時報2537号12頁
    社会保障
    「生活保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われ、民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定められる扶助は、すべて生活保護法による保護に優先して行われるものとされている(生活保護法4条1項、2項)のであるから、相手方及び子らの生活を維持するための費用は、まずは相手方及び子らに対して民法上扶養義務を負う抗告人による婚姻費用の分担によって賄われるべきであり、抗告人が負担すべき婚姻費用分担額を算定するに当たっては、相手方が受給している生活保護費を相手方の収入と評価することはできない」
  • 2021.04.21 東京高裁決定
    収録 判例時報2515号9頁,判例タイムズ1496号121頁,家庭の法と裁判37号35頁
    潜在的稼働能力
    「婚姻費用を分担すべき義務者の収入は,現に得ている実収入によるのが原則であるところ,失職した義務者の収入について,潜在的稼働能力に基づき収入の認定をすることが許されるのは,就労が制限される客観的,合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず,そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情がある場合でなければならないものと解される」
  • 2020.11.30 宇都宮家裁審判
    収録 判例時報2516号87頁,判例タイムズ1497号251頁,家庭の法と裁判36号129頁
    始期
    「婚姻費用分担義務が生活保持義務に基づくものであるという性質及び当事者の公平の観点に照らし,婚姻費用分担の始期については,請求時を基準とするのが相当である。そして,本件においては,申立人が相手方に対し,内容証明郵便をもって婚姻費用の分担を求める意思を確定的に表明しているのであって,この時点をもって婚姻費用分担の始期とするのが相当であると認められる。」
  • 2020.10.02 東京高裁決定
    収録 家庭の法と裁判37号41頁
    私学/大学の学校教育費
    「抗告人は,学費等の算定に関して,当事者間で二等分すべきと主張する。しかしながら,本件における抗告人の年収が約970万円,…相手方の年収が約130万円…にとどまることを前提とすると,超過分の学費に関しては,特別経費と同様に基礎収入割合とすることが不相当であるとは言えず,この点に関する抗告人の主張は採用できない。」
  • 2020.03.04 東京高裁決定
    収録 判例時報2480号3頁,判例タイムズ1484号126頁
    養子縁組
    「親権者である一方の親が再婚したことに伴い,その親権に服する子が親権者の再婚相手と養子縁組をした場合,当該子の扶養義務は,第1次的には親権者及び養親となった再婚相手が負うべきものであり,親権者及び養親がその資力の点で十分に扶養義務を履行できないときに限り,第2次的に実親が負担すべきことになると解される。」
    「一度合意された養育費を変更する場合に,その始期をいつとすべきかは,家事審判事件における裁判所の合理的な裁量にゆだられていると解されるところ…相手方は,抗告人Yの再婚や未成年者らの養子縁組の可能性を認識しながら,養子縁組につき調査,確認をし,より早期に養育費支払義務の免除を求める調停や審判の申立てを行うことなく,3年以上にもわたって720万円にも上る養育費を支払い続けたわけであるから,本件においては,むしろ相手方は,養子縁組の成立時期等について重きを置いていたわけではなく,実際に本件調停を申し立てるまでは,未成年者らの福祉の充実の観点から合意した養育費を支払い続けたものと評価することも可能といえる。以上の事情を総合的に考慮すれば,相手方の養育費支払義務がないものと変更する始期については,本件調停申立月である令和元年5月とすることが相当である」