判例紹介

  • 2018.04.20 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1457号85頁
    潜在的稼働能力
    「原審申立人は,歯科衛生士の資格を有しており,10年以上にわたって歯科医院での勤務経験があるものの,本決定日において,長男は満5歳であるものの,長女は3歳に達したばかりの幼少であり,幼稚園にも保育園にも入園しておらず,その予定もないことからすると,婚姻費用の算定に当たり,原審申立人の潜在的な稼働能力をもとに,その収入を認定するのは相当とはいえない。」
  • 2018.01.30 札幌高裁決定
    収録 判例タイムズ1459号110頁,判例時報2373号49頁
    再婚
    「原審申立人が再婚相手の子らの生活費指数については,再婚相手も上記子らの扶養義務を有しているから,その生活費指数を原審申立人と再婚相手の収入比によって按分するのが相当である」
    「未成年者,原審申立人が再婚相手の子らの生活費指数はいずれも55となるが,上記子らの生活費指数については,上記アのとおり原審申立人と再婚相手の基礎収入比によって按分するのが相当であるから,いずれも次の計算式のとおり,39とする。」
  • 2017.12.15 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1457号101頁
    高額所得者
    「自宅マンションの賃料は月額330万円であり,抗告人がこれを負担していた。」
    「義務者である抗告人が年収1億5000万円を超える高額所得者であるため,年収2000万円を上限とする標準算定方式を利用できない。」
    「職業費,特別経費及び貯蓄率に関する標準的な割合を的確に算定できる統計資料が見当たらず,一件記録によっても,これらの実額も不明である。」
    「本件においては,抗告人と相手方との同居時の生活水準,生活費支出状況等及び別居開始から平成27年1月(抗告人が相手方のクレジットカード利用代金の支払に限度を設けていなかったため,相手方の生活費の支出が抑制されなかったと考えられる期間)までの相手方の生活水準,生活費支出状況等を中心とする本件に現れた諸般の事情を踏まえ,家計が二つになることにより抗告人及び相手方双方の生活費の支出に重複的な支出が生ずること,婚姻費用分担金は飽くまでも生活費であって,従前の贅沢な生活をそのまま保障しようとするものではないこと等を考慮して,婚姻費用分担の額を算定することとする。」
    「相手方が従前の生活水準を維持するために必要な費用は月額105万円程度(公租公課を除く。)とみるのが相当である。」
    「本件に現れた諸般の事情を考慮すると,抗告人が相手方に支払うべき婚姻費用分担金は月額75万円(なお,この額は,相手方が自宅マンションに自己の負担なく居住を継続することができることを考慮すると,実質的には相当高額ということができる。)と定めるのが相当である。」
  • 2017.09.20 福岡高裁決定
    収録 判例タイムズ1449号144頁,判例時報2366号25頁
    再婚 養子縁組
    「両親の離婚後,親権者である一方の親が再婚したことに伴い,その親権に服する子が親権者の再婚相手と養子縁組をした場合,当該子の扶養義務は第1次的には親権者及び養親となったその再婚相手が負うべきものであるから,かかる事情は,非親権者が親権者に対して支払うべき子の養育費を見直すべき事情に当たり,親権者及びその再婚相手(以下「養親ら」という。)の資力が十分でなく,養親らだけでは子について十分に扶養義務を履行することができないときは,第2次的に非親権者は親権者に対して,その不足分を補う養育費を支払う義務を負うものと解すべきである。そして,何をもって十分に扶養義務を履行することができないとするかは,生活保護法による保護の基準が一つの目安となるが,それだけでなく,子の需要,非親権者の意思等諸般の事情を総合的に勘案すべきである。」
  • 2016.09.14 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1436号113頁
    高額所得者
    「抗告人の給与収入総額は3939万9067円となる。この額は,いわゆる標準算定表(判例タイムズ1111号285頁参照)の義務者の年収の上限額2000万円を大幅に超えていることに鑑み,抗告人の基礎収入を算定するに当たっては,税金及び社会保険料の実額(1348万9317円)を控除し,さらに,職業費,特別経費及び貯蓄分を控除すべきである。」
    「職業費については,抗告人の場合と年収2000万円以下の場合とでその占める割合が大きく変わるとは考えられないから収入比18.92%とすべきである。他方で,特別経費については,一般に高額所得者の方が収入に占める割合が小さくなり,その分貯蓄や資産形成に回る分が増える傾向にあると考えられる。そして,年収2000万円以下の者でも相応の貯蓄はしているはずであり,抗告人のこれまでの貯蓄額が判然としない本件事案においては,抗告人についてのみ純粋に平均的な貯蓄額の満額を控除すべきではなく,標準算定表の上限である年収2000万円程度の者の平均的な貯蓄額との差額のみを考慮すべきである(標準算定方式では,特別経費について年収1500万円以上の者について収入比16.40%との前提に立っているが,年収2000万円程度の場合でも同様の収入比に立っており,この中に貯蓄的要素を既に加味しているともいえる。)。もっとも,本件では,年収2000万円程度の者の貯蓄額と3900万円程度の者の貯蓄額との比較ができる有意な資料がないことから,その差額について推認するほかないところ,抗告人が引用する家計調査年報の,総世帯のうち勤労者世帯の貯蓄率は,年収1018万円以上が27.3%,全収入の平均が21.4%であること,二人以上の世帯のうち勤労者世帯の貯蓄率が,年収1500万円以上が31.9%,全収入の平均が19.8%であること,その他本件に現れた一切の事情を考慮して,特別経費については年収1500万円以上の者の収入比とされる16.40%とするとともに,抗告人について,総収入から税金及び社会保険料を控除した可処分所得の7%分を相当な貯蓄分と定めることとする。」