判例紹介

  • 2022.10.13 東京高裁決定
    収録 家庭の法と裁判45号47頁
    権利濫用
    「婚姻費用分担義務は、前述したように婚姻という法律関係から生じるものであって、夫婦の同居や協力関係の存在という事実状態から生じるものではないから、婚姻の届出後同居することもないままに婚姻関係を継続し、その後、仮にXとYの婚姻関係が既に破綻していると評価されるような事実状態に至ったとしても、前記法律上の扶助義務が消滅するということはできない。」
  • 2022.05.13 宇都宮家裁
    収録 家庭の法と裁判46号88頁
    増減額 養子縁組
    「相手方夫は相手方と再婚した後も長女と養子縁組をしていないものの、これに準ずる状態にあるとするのが相当であるところ、このような状態は本件合意時に前提とされておらず、これによって本件合意の内容が実情に適合せず相当性を欠くに至ったといえるから、相手方夫と長女が養子縁組に準ずる状態であることは事情の変更に当たるとするのが相当である。」
    「総収入は少なくとも1567万円の営業所得(算定表の上限の金額)を得ていると推認するのが相当といえる。これを前提にすると、相手方夫は、絶対的にも、申立人に比して相対的にも相当に高額な収入を得ていると考えられ、このような相手方夫が長女を事実上扶養して事実上養子縁組している状態であること、長女への生活費等の給付が十分にされていると考えられることに鑑み、相手方夫の上記総収入から208万円程度(相手方夫が扶養義務を負うとした場合の子の生活費を参考にした金額。1567万円×48%×62÷(100+62+62)≒208万円(1万円以下四捨五入。))を相手方の総収入に加算するのが相当である。」
  • 2022.03.17 東京高裁決定
    収録 家庭の法と裁判42号46頁、判例時報2540号5頁
    年金
    1.年金収入の給与収入への換算について
    「年金収入は年額39万2160円に相当するところ、年金収入については給与収入と異なり職業費の支出を考慮する必要がないため、近時の統計資料に基づく総収入に占める職業費の割合…のうち15%を採用して給与収入に換算すると、おおむね年額46万円(392,160÷(1-0.15)=461,364)となる」
    2.年金収入の事業収入への換算について
    「事業収入は、既に職業費に相当する費用を控除済みのものであるから、年金収入を事業収入に換算するに当たっても、上記…のような修正計算は必要ない」
  • 2022.02.24 大阪高裁決定
    収録 家庭の法と裁判43号69頁、判例タイムズ1508号108頁、判例時報2561・2562号76頁
    高額所得者
    「改定標準算定表においては義務者の自営収入の上限が1567万円までしか想定されていないところ、原審相手方の事業収入が前記上限の5倍近くになることからすると、本件で単純に改定標準算定表を用いることはできない。また、前記上限からの超過額が甚だしいことに照らすと、当該上限(1567万円)をもって原審相手方の事業収入と擬制するのは相当でない。そこで、夫婦分に相当する基礎収入を算定し、これを生活費指数で按分するという本件算定方式を維持した上で、高額所得者である原審相手方においては総収入から控除する税金や社会保険料、職業費及び特別経費について、原審相手方における事業収入の特殊性を踏まえた数値を用い、さらに一定の貯蓄分を控除して、同人の基礎収入を修正計算するのが相当である。」
  • 2022.02.04 東京高裁決定
    収録 家庭の法と裁判41号60頁、判例時報2537号12頁、判例タイムズ1508号120頁
    社会保障
    「生活保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われ、民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定められる扶助は、すべて生活保護法による保護に優先して行われるものとされている(生活保護法4条1項、2項)のであるから、相手方及び子らの生活を維持するための費用は、まずは相手方及び子らに対して民法上扶養義務を負う抗告人による婚姻費用の分担によって賄われるべきであり、抗告人が負担すべき婚姻費用分担額を算定するに当たっては、相手方が受給している生活保護費を相手方の収入と評価することはできない」