判例紹介

  • 2020.01.23 最高裁判所第一小法廷決定
    収録 判例タイムズ1475号56頁,判例時報2454号18頁
    法的性質
    結論:「婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても,これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえない。」
    理由:
    ①「婚姻費用分担審判の申立て後に離婚により婚姻関係が終了した場合…に,婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在せず,」
    ②「家庭裁判所は,過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができるのであるから(前掲最高裁昭和40年6月30日大法廷決定参照),夫婦の資産,収入その他一切の事情を考慮して,離婚時までの過去の婚姻費用のみの具体的な分担額を形成決定することもできる」
  • 2019.12.19 東京高裁決定
    収録 判例時報2471号68頁,判例タイムズ1482号102頁,家庭の法と裁判30号78頁
    増減額 年金
    1.事情変更について
    「相手方の退職や再雇用,これらに伴う収入の減少は,前件調停の段階でも蓋然性の高いものとして予想されていたものと認められるものの,確実なものとして具体的に予見されていたものではなく,…これらに伴う収入の減少を前提としたものであったと認めることはできず,これらの事情によって変更されることもやむを得ない」
    2.年金について
    「相手方は,65歳で年金の受給を開始していれば,…年金を受給することができるものと認められることからすると,…相手方が本来であれば得ることができる収入として,婚姻費用の分担額の算定の基礎とするのが相当である。…同居する夫婦の間では,年金収入はその共同生活の糧とするのが通常であることからすると,これを相手方の独自の判断で受給しないこととしたからといって,その収入がないものとして婚姻費用の算定をするのは相当とはいえない。…このような取扱いをする以上,今後,実際に相手方が年金の受給を開始し,受給開始時期との関係で前記の金額よりも高額な年金を受給することができたとしても,基本的には,当該高額な年金の受給に基づいて婚姻費用の算定をすることはできず,この事実をもって,婚姻費用を変更すべき事情に当たるものと認めることもできないということになる。」
  • 2019.11.12 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1479号59頁
    社会保障
    「幼児教育の無償化は,子の監護者の経済的負担を軽減すること等により子の健全成長の実現を目的とするものであり(子ども・子育て支援法1条参照),このような公的支援は,私的な扶助を補助する性質を有するにすぎないから,上記制度の開始を理由として令和元年10月からの婚姻費用分担額を減額すべきであるとする抗告人の主張は採用できない。」
  • 2019.08.19 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1473号63頁,判例時報2443号16頁
    増減額
    「不可分一体というべき上記各条項につき,住宅ローンの支払に関係する条項については,本来,家事審判事項とはいえず,本件において変更することは許されないというべきであるから,養育費の月額のみを一方的に変更することは不当な結果を導くことになり,相当でない。」
  • 2019.03.26 最高裁判所第三小法廷決定
    収録 判例時報2452号14頁
    権利濫用
    「XとYとの婚姻関係が悪化して別居するに至った原因は,専ら,Xの不貞行為にあったというべきである。したがって,XからYに対する婚姻費用の分担を求める請求のうち,X自身の婚姻費用を求める部分については,その請求は信義則に反し,権利の濫用に当たり認められないとの原々審の判断は相当である」との「原審の判断は,是認することができる。」