判例紹介

  • 2022.02.24 大阪高裁決定
    収録 家庭の法と裁判43号69頁、判例タイムズ1508号108頁、判例時報2561・2562号76頁
    高額所得者
    「改定標準算定表においては義務者の自営収入の上限が1567万円までしか想定されていないところ、原審相手方の事業収入が前記上限の5倍近くになることからすると、本件で単純に改定標準算定表を用いることはできない。また、前記上限からの超過額が甚だしいことに照らすと、当該上限(1567万円)をもって原審相手方の事業収入と擬制するのは相当でない。そこで、夫婦分に相当する基礎収入を算定し、これを生活費指数で按分するという本件算定方式を維持した上で、高額所得者である原審相手方においては総収入から控除する税金や社会保険料、職業費及び特別経費について、原審相手方における事業収入の特殊性を踏まえた数値を用い、さらに一定の貯蓄分を控除して、同人の基礎収入を修正計算するのが相当である。」
  • 2022.02.04 東京高裁決定
    収録 家庭の法と裁判41号60頁、判例時報2537号12頁、判例タイムズ1508号120頁
    社会保障
    「生活保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われ、民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定められる扶助は、すべて生活保護法による保護に優先して行われるものとされている(生活保護法4条1項、2項)のであるから、相手方及び子らの生活を維持するための費用は、まずは相手方及び子らに対して民法上扶養義務を負う抗告人による婚姻費用の分担によって賄われるべきであり、抗告人が負担すべき婚姻費用分担額を算定するに当たっては、相手方が受給している生活保護費を相手方の収入と評価することはできない」
  • 2021.04.21 東京高裁決定
    収録 判例時報2515号9頁,判例タイムズ1496号121頁,家庭の法と裁判37号35頁
    潜在的稼働能力
    「婚姻費用を分担すべき義務者の収入は,現に得ている実収入によるのが原則であるところ,失職した義務者の収入について,潜在的稼働能力に基づき収入の認定をすることが許されるのは,就労が制限される客観的,合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず,そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情がある場合でなければならないものと解される」
  • 2020.11.30 宇都宮家裁審判
    収録 判例時報2516号87頁,判例タイムズ1497号251頁,家庭の法と裁判36号129頁
    始期
    「婚姻費用分担義務が生活保持義務に基づくものであるという性質及び当事者の公平の観点に照らし,婚姻費用分担の始期については,請求時を基準とするのが相当である。そして,本件においては,申立人が相手方に対し,内容証明郵便をもって婚姻費用の分担を求める意思を確定的に表明しているのであって,この時点をもって婚姻費用分担の始期とするのが相当であると認められる。」
  • 2020.10.02 東京高裁決定
    収録 家庭の法と裁判37号41頁
    私学/大学の学校教育費
    「抗告人は,学費等の算定に関して,当事者間で二等分すべきと主張する。しかしながら,本件における抗告人の年収が約970万円,…相手方の年収が約130万円…にとどまることを前提とすると,超過分の学費に関しては,特別経費と同様に基礎収入割合とすることが不相当であるとは言えず,この点に関する抗告人の主張は採用できない。」