判例紹介

  • 2021.04.21 東京高裁決定
    収録 判例時報2515号9頁,判例タイムズ1496号121頁,家庭の法と裁判37号35頁
    潜在的稼働能力
    「婚姻費用を分担すべき義務者の収入は,現に得ている実収入によるのが原則であるところ,失職した義務者の収入について,潜在的稼働能力に基づき収入の認定をすることが許されるのは,就労が制限される客観的,合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず,そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情がある場合でなければならないものと解される」
  • 2020.02.20 大阪高裁決定
    収録 家庭の法と裁判31号64頁,判例時報2477号52頁,判例タイムズ1484号130頁
    増減額 潜在的稼働能力
    「抗告人は,前件審判後,断続的にD医師の診察を受け,Hを退職してほとんど収入がない状態となっているが,自らの意思で退職した上,退職直前の給与収入は前件審判当時と大差はなかったし,退職後の行動をみても,抑うつ状態のため就労困難であるとは認められないから,抗告人の稼働能力が前件審判当時と比べて大幅に低下していると認めることはできず,抗告人は,退職後現在に至るまで前件審判当時と同程度の収入を得る稼働能力を有しているとみるべきである。したがって,抗告人の精神状態や退職にょる収入の減少は,前件審判で定められた婚姻費用分担金を減額すべき事情の変更と言うことはでき(ない)」
  • 2018.04.20 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1457号85頁
    潜在的稼働能力
    「原審申立人は,歯科衛生士の資格を有しており,10年以上にわたって歯科医院での勤務経験があるものの,本決定日において,長男は満5歳であるものの,長女は3歳に達したばかりの幼少であり,幼稚園にも保育園にも入園しておらず,その予定もないことからすると,婚姻費用の算定に当たり,原審申立人の潜在的な稼働能力をもとに,その収入を認定するのは相当とはいえない。」
  • 2016.01.19 東京高裁決定
    収録 判例タイムズ1429号129頁,判例時報2311号19頁
    潜在的稼働能力
    「養育費は,当事者が現に得ている実収入に基づき算定するのが原則であり,義務者が無職であったり,低額の収入しか得ていないときは,就労が制限される客観的,合理的事情がないのに単に労働意欲を欠いているなどの主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず,そのことが養育費の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される場合に初めて,義務者が本来の稼働能力(潜在的稼働能力)を発揮したとしたら得られるであろう収入を諸般の事情から推認し,これを養育費算定の基礎とすることが許される」